絵本のコラム

 子育てにとって絵本が「大切なもの」ということは常識になっていますが、子どもの成長や発達に合わせた絵本選びというのは、玩具選びと同じくらい大切なものであると同時に、簡単なことではありません。
 広島安佐プレイルームには20年以上、絵本の普及に携わってきた「読み聞かせのプロ」がおりますので、絵本について安心して相談していただけます。
 また、このページではこれまでにお客様からいただいた「絵本と子どもにまつわるお便り」を紹介させていただきます。絵本がお子様の心を育てることが染み込むように伝わってくるエピソードです。

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おおきなかぶ

出版社:福音館書店 作:A・トルストイ 絵:佐藤忠良 訳:内田莉莎子

絵本/おおきなかぶ

 ある休日の朝、お休みの日は早起きの子ども達が最初に起き、私が起きて、でもお父さんはいつまでも起きてきませんでした。
 朝ご飯を食べても、軽いお散歩がすんでも、まだ起きてきません。

 もうすぐお昼です。
 「そろそろお父さんにも起きてもらった方がいいかな。ねえ、お父さんを起こしてきてくれる?」と子ども達に頼みました。

 寝室からなにやらやりとりが聞こえますが、お父さんはまだおきてきません。
 「お母さん、ちょっときて!!」と大きな声がするので、どうしたのかしらと思いながら急いでいくと、子ども達がいいました。

 「子ども達は、おかあさんをよんできました。」

 「おかあさんが おとうとを ひっぱって おとうとが おねえちゃんを ひっぱって おねえちゃんが おとうさんを ひっぱって うんとこしょ、どっこいしょ!!」

 「それでもおとうさんは起きません」

 「ねこもよんでこよう!」
 実際に、我が家のねこ達も動員されました。

 「ねこが おかあさんを ひっぱって おとうとが おねえちゃんを ひっぱって
 おねえちゃんが おとうさんを ひっぱって うんとこしょ、どっこいしょ!!」

 私たちは声をそろえて、ベッドの上のおとうさんをひっぱりました。見ると、おとうさんは無理矢理目をとじて、「くっくっく」と笑っています。

 「もういちどひっぱってみよう!」 「うんとこしょ、どっこいしょ!!」
 「やっと、おとうさんは、おきました」

 最近「おおきなかぶ」を何度も読んでは子ども達と体をゆすっていたのをお父さんも横目でみていたのかもしれません。同じ絵本を家族で楽しむって、幸せなことだなあ、と感じた休日の出来事でした。

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おおきなきがほしい

出版社:偕成社 作:佐藤さとる 絵:村上勉

絵本/おおきなきがほしい

 この本は1971年に刊行されました。私が10才にもならない頃に、この絵本もこの世に生まれてきたのです。
 そのころの私は、いろいろなことを想像しては、文章や絵に描くのが好きな女の子だったようです。私はよく、「おうち」の絵を描いていたのを思い出します。家族それぞれの部屋のほかに、絵本の部屋、積み木の部屋、ピアノの部屋、お花の部屋…
 私が想像の翼をひろげて「おうちの絵」を描いていたころに、とても好きだった絵本を思い出します。
 「おおきな きが ほしい」です。

 主人公のかおるは、洗濯をしているおかあさんに「おおきなきがほしいな」と夢を語ります。 それがどんな木かは、絵本の表紙を見れば即座に想像できます。
 季節が巡るたびに、自然の恵みをたっぷりといただき、鳥やリスたちとおしゃべりをしながらのんびりと時間をすごす小屋をしつらえた、たからもののような素敵な木です。
 私はこの本のとりこになり、何度も何度も読み返していました。この絵本を読んだ感動が、後に小学生の私が、佐藤さとる・村上勉コンビの「だれも知らない小さな国 」に始まるコロボックルシリーズと出会う布石になっていたのは間違いありません。

 それから長い年月がたちました。
 今もうちの納戸で眠る「コロボックルシリーズ」はもう何年も開かれていません。でもあるとき、「おおきなきがほしい」とは再び出合うことになりました。我が子のために手にした本でした。
 6才の娘は目をかがやかせてくれました。
 3才の息子には、まだ早かったのかな?と思いました。

 読んだ後で、
 「お母さんは子どものときに、この本が大好きだったのよ」
 「こんな大きな木が欲しかったのよ、でもお母さんのおうちにも、こんな木はなかったの」
  と、子ども達を膝に抱いて話しました。
 またこの絵本と出会えた、今は我が子のために読んでいる、そんなことを思って涙がこぼれました。

 翌日のことでした。子ども達がなにやら、いつものように工作やらお絵かきやらをしているようです。

 「おかあさん、みてみて!!」

 子ども達が私のために、「おおきな木」の絵をかいてくれました。ちょうど絵本のとびらにあるような、緑色の画用紙をつなげた、高い高い、どこまでも続くおおきな木です。とちゅうには、はしごや、かごや、小屋や、みはらし台もあります。ことりもリスも遊んでいました。私が子どものころに遊んだ絵本の世界が、こうしてまた子ども達の心もやさしく満たし、形になって私に返ってきてくれたようです。

 子どもの頃の私と、子ども時代を生きる我が子たちが、同じ本を読み、「こんな木がほしい」と同じ思いを抱くことができました。こんな体験は、絵本でなくてはできることではないかもしれません。

「おおきなきがほしい」を描いたよ!
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